AEVE ENDING
「…ひとつ、前から言いたいことがあったんだけど」
そう前置きを口にしたのは、或いは戸惑いがあったからといえるのだろう。
雲雀の言葉に、桐生はにいまりと嗤って見せた。
「言ってみればいい」
どんな馬鹿げた言葉が出るのかと、待ち構えるように。
「…桐生理事、僕は貴方の能力には一目置いているし、アダムとしての高すぎる誇り、というより驕り、かな…。一応それにも半分くらいは脱帽してる」
「…なにをらしくなく脚色をしている。歯に衣着せぬ物言いは相変わらずだが、今のは聞いていて歯痒いだけだぞ」
―――煩い。
「……少しは黙って人の話を聞いたらどうなの」
不愉快そうに吐き捨てた雲雀に、桐生は両手を挙げて謝罪を見せた。
雲雀が溜め息混じりに息を吐くと、斜めに俯いた状態で、そのまま視線だけ上げて桐生を睨み付ける。
幾田桐生という名の、アダムの誇りと驕りの塊。
「───あなたのアダム至高論にはウンザリする」
なにをそこまで相容れないと罵りあうのか。
ひとりじゃなにもできない弱者は視界に入れるも不愉快だが、自分の価値を違う莫迦はもっと嫌いだ。
あからさまに過剰評価、或いは過小評価する。
精神と思考を有する生物特有の愚かなご謙遜とプライド。
(…ばかばかしい)
今すぐ踏みにじって滅茶苦茶にして二度と再生しないように消しさってしまいたい。
「…随分な理想論を口にしているのは、寧ろお前のようだが」
ゆるりと吹いた風に、消される寸前の音。
修羅は、穢れゆく人類を敵視しているものだと思っていたのに。
「僕が忌むのは、愚かしい生物すべて」
静かに、洗練された声が酸素に融けていく。
『…ひばり』
「愚かしい、とは神を侮辱する人種を指すのかね」
きしり。
足元の人形が鳴く。
小さく、とても小さく、悲鳴を上げるように。
それは。
───『橘』