AEVE ENDING





アミがアダムとして箱舟に収容されるまで、倫子とアミは片時も離れたことはなかったから、唯一無二の親友って、まさにこのこと。

けれど、アミがアダムと診断された時、彼女は倫子になにも話さないままこの慣れ親しんだ土地からいなくなった。

途方に暮れた。




『…ねぇちゃん、ねぇちゃん、これ、アミねぇが』

突然訪れた別れに、なにも言ってくれなかったアミへの腹立ちや自分への無力感やら、とにかく悔しくて寂しくて泣いていると、八歳の弟が倫子に渡したもの。



『…ばかやろ』

掌に転がるそれは、馬鹿みたいに安っぽいビー玉だった。

真っ赤なビー玉。

アミの色だ。



『…いきていれば、ぜったいあえるから、だから、はなれちゃったけど、いっしょにがんばろう、って』

アミからの伝言を棒読みする弟を抱っこしながら、倫子は泣き笑いするしかなかったのを覚えている。

あたたかな記憶。

(なにより私を支えていたもの)

倫子がなにより、なくしたくなかったもの。








『君が被験者第一号だ。歓びたまえ』
『この管を脳に直接繋げてみてはどうかな。電流を流して反応をみれば、自然的にアダムとして発症する可能性も…』
『この数値は酷過ぎる。例の新薬を投与して、肺の部分を切り取って培養にかけよう』

耳障りなノイズが頭のなかを支配している。

冷たい実験台に固定されて動けないまま、めちゃくちゃに壊されて。

(…ぐちゃぐちゃだ)

もう頭のなかも、体のなかもできうる限り、めちゃくちゃに破壊されていた。


(───神様…)

神様なんか、知りはしないのに。
何故、縋らずにはいられない?





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