AEVE ENDING
神様なんてそんなもの、もともと存在する筈もなくて。
この壊れた世界を指さし神様が下した罰と大仰に云いすます愚か者に、苦痛と終焉を。
「有り得ない」
「そうだね」
「マージーで、有り得ない。泣きたい」
「泣けば?慰めはしないけど」
「…うちに帰りたい」
「帰ったら?誰も止めないからよ」
「…死にたい」
「手伝うよ」
「……あぁあああぁあ!」
ガチャッと部屋のキーがタイルに転がり、それを投げ捨てた倫子は頭を抱えて叫び声を上げた。
長く先へと続く西部箱舟の回廊に、虚しく雄叫びが木霊する。
「有り得ねぇよ!」
「それ、さっきも聞いたけど。その歳で痴呆なの。気の毒に」
その隣を歩く雲雀は、そんな倫子に一瞥をくれることもなく辛辣に言葉を返す。
「お前が有り得ねーんだよ!勘弁しろよ!なんだ今のトゲだらけの会話!」
「あれが僕の通常スタイルだよ」
「折れ!トゲを折れ!」
「棘だけじゃないよ」
「は?」
「毒もある」
にっこり。
倫子、限界である。
―――ここは敷地内だけは広大な西部エリアにある宿舎棟である。
結局、反感も泣き落としも奥田には通じず、何故か反対していた教師面すら奥田に言いくるめられ、逃げ道は絶たれた。
「シネ」
「君がね」
そして今に至る。
何故か同じ部屋のキーを握り締め、宛てがわれた部屋へと向かう道中の隣人。
史上最悪に相性が合わない、男と女、各一。
「…いやだ」
「なにが?」
「あんたと一緒に仲良しこよしなんて、死んでもいやだ!」
「その台詞、そっくりそのまま君に返す」
「…アミぃぃぃ!」
「さっきから泣き言ばかり」
「黙れ。甘ったれた青春満喫中なんだよ。だからあんたにそれを荒らされるのだけは耐えられない」
「馬鹿じゃないの?」
「だからトゲを折れ!この自己中野郎!」
「今のは毒のつもりだけど」
にっこり。
麗しい笑みが痛い。
(…あのクソ教師、今度会ったらボコリ決定)」
八つ当たりである。
「それには賛成だよ。大いに」
「読むなよ。頭の中を、勝手に、読むな」
「残念ながら、低俗な思考を自ら好んで覗き見るような趣味は持ち合わせていない」
倫子、二度目の限界、来たる。