AEVE ENDING
「世界中に存在する人種差別主義の人間達から迫害を受けてきたアダム達を集い、明るみでは存在できない、巨大な組織を」
そして、世界を創り変えるのだ。
(それこそ、)
「自分の力で世界を変えるなんて豪語してる時点で、あんたは現実が見えてないただの耄碌ジジィだ」
汚く苛立たしげに吐き出した、無鉄砲な、それ。
「わたしの計画を知れば、きっと皆が皆そう言うだろうが、構わないさ。───成し遂げればいいことだ」
そうすれば、誰もなにも言うまい。
にいと軽薄に釣り上がった口端に、倫子はかっとなった。
「どれほどの犠牲が出ると思ってる!?人もアダムも、あんただって、無事でいられるかわからない!」
夢に盲目の男。
この男が無力な人間ならば、ただの夢見がちな、取るに足らない存在であったのに。
力を持つ、その危うさ。
「人もアダムも同じ有機物だ。その血を流すことで、なにが変わるって!?」
憎しみと悲しみのループ。
やり切れない無力感と焦燥感にただ、身を窶して。
「…あんたは、先の大戦を繰り返そうとしているだけだ。なにも残らない。土地も山も海も、草木も、なにも、残らない」
この涸れた大地はまるで、その白濁した目玉みたいに。
「…、なにを勘違いしている。私は人類を滅亡させようなどとは考えていない。我々、アダムの支配下に置き隷属化し、その廃れた精神を叩き直してやろうというのだ」
くつりと嗤うそれに、背筋が凍る。
その先に、なにが見いだせるというのか。
「神を語って神の所業を成し遂げる?……あんたがしようとしてるのはただの傲慢な独りよがりだ!あんたが侮蔑する人間となにひとつ変わらない。下らない理想を盾にして、人々を虐殺するただの犯罪者だ!」
かつてのこの身のように、眼前の餌に釣られて。
このなまっちろい手を血で汚して肉にまみれさせて、そして落ちることも赦されない。