AEVE ENDING
『…雲雀』
どこか躊躇うような、けれど傍を望む、雲雀を慕う声、ではない。
『、…お前なんか知らない…っ!知らないのに、もう、いや、いやだぁああ…』
その傷ついた体を抱き締めて、もがき苦しみ、嘆く、彼女を。
罪悪に、打ちのめされる。
(この醜悪で残酷なビジョンを、橘に許可なく見続けていることにすら……)
今すぐ駆け寄って、その嘆く体を抑え付けて、傷付いて濡れた頬を、撫でて。
―――そして。
『ぅ、あ、ごめ…、ごめんな、さ…ごめんなさい』
赦して、と。
なにに対しての謝罪なのか、雲雀には理解できない。
知る術すら、ない。
『…ごめんなさい、赦して、』
先程とは打って変わって贖罪の意を表す、憐れな姿に。
過去と知りつつ、手を、伸ばしてしまうのは。
「───橘、…」
空を切る指は虚しく、そしてその冷たさに、声すら届く筈もないのに。
『あんたには、あんたには解らない…っ!』
そう、悲鳴染みた叫びを、以前。
悶え苦しむ小さな身体を、無理矢理に抑え込み、一枚一枚、小さな羽根をもいで、殺してしまおうと。
剥がれゆく防壁の殻のなかで、彼女は。
『…恥ずかしい、』
───その醜い皮膚を、胎内を、恥じて。
『もう、厭だ…』
全て投げ出して、守られたい、と。
シグナルはそれこそ、手一杯、掬える程に。
必死に、警鐘を発していたのに。
(───近付くな、と)
逃げていた。
そして、畏れていたのだ。
これ以上傷つきたくないと必死に張られていた壁を、なにも知らずに、知ろうともせずに、乱暴に壊した。
(その先に、橘の終わりがあることを知っていて)
―――それは。