AEVE ENDING
「お前にとって、守るべきものは足枷となる。足枷を断つ仲間がいなければ、お前は桐生には勝てない」
それは惑わそうとしているのか、それとも。
「…黙りなよ」
独りであることに価値があった。
高い意思もプライドも、全てが孤立した世界で。
それが唯一、課せられた戒めだったのかもしれない。
『雲雀』
―――けれど、そこへ飛び込んできた小さな蟲に、すべて掻き回された。
(…蟲はまだ、繭のなかで眠っている)
ならば今すぐ、この男を殺してしまわなければ。
仲間などという甘言を言うつもりは、更々ない。
「雲雀、」
それなのに鍾鬼は、まだ虚言を吐くつもりらしい。
何故、そうまでして喰い下がるのか。
「何度言えば気が済むの?僕に仲間なんて必要な、」
苛立ちを露にした雲雀は、鍾鬼の片脚に狙いを定めた。
骨を砕け散る勢いを通り越して、千切り捨ててしまおうと。
―――ド、ォオオン…!
「…、!」
雲雀の言葉尻が、爆音に勢いよく飲み込まれた。
鐘鬼の仕業かと見れば、鐘鬼も突然の爆音に目を見開いて爆発箇所を見やっている。
(この気配…)
轟々と立つ茶色の煙は部屋を半壊し、籠められた空気を薄暗い外に開放していた。
微かに見える、床のクレーター。
恐らく爆心地だろうそこに、パチリパチリと電流の糸が走っている。
見覚えのある現象。
「―――仲間は必要ないって?」
立ち上る煙から、ゆるりと長身の影が浮いて沸いた。
爆風に靡くその軽やかな裾は、艶やかな和色が滲んでいる。
「そりゃぁないんじゃないのぉ、ヒーバリよぉ」
派手な着流し。
すらりと伸びた足には朱色の下駄。
腰に差した、恐らく国宝級のもの業物の顎に手を置き、短い金髪が揺れる。
「…猿」
―――もとい真醍。
反アダム派「北の島」頭領。お産休暇中。
「久しぶりだなぁ、おい。相変わらずイイツラしてっぺぇ」
絶滅した筈の方言を節操なく使い分ける不審な男。
鐘鬼は顔をしかめた。
恐らく、彼に真醍の言葉は理解できない。