AEVE ENDING
「自爆か?」
再び刀を構え、真醍は正面を見据える。
数本焼け焦げた髪をいじりながら、鐘鬼は視線だけを真醍に投じた。
「貴様の刀に首を両断されるより、自ら起こした爆発で軽い火傷を負うほうがマシだ」
首を奪られては、成せるものも成せない。
「昔から、周囲に気を配る闘い方が好かん。自分を保護する手間もうざたらしい」
吐き捨てるそれは、命を投げ出すことに躊躇しない男のもの。
―――相手を殺れるなら、自らの力で死のうが構わない。
気狂いっぷりは、雲雀にも敗けないだろう。
「…テメーも大した男だっぺなあ」
「……理解できん」
「なにがよ」
「お前の言葉、だ」
ギィ。と鳴る刀が耳に心地好い。
壁に飾られていたサーベルを手に、鐘鬼は真醍の刀の向きを逸らす。
しかし、真醍から笑みは引かない。
「そんな細い刀身じゃ、こいつにゃ勝てねぇぞ」
「…だろうな」
仕合えばひとたまりもない。
手にしていたサーベルが折れると、鐘鬼はすぐさま壁際へと跳んだ。
それを察知した真醍が、ほぼ本能的に刀を向ける―――が、避けられる。
華奢で力もあれば、身軽だ。
アダムという能力者である以前にその身体能力には目を見張るものがある。
まるで踊りのような拍子をとり、動く様は美しさすら。
凡人ならば今の今まで真醍が刀を振るった軌跡だけで、既に数回は死んでいる。
掠り傷一つ、互いに負わせられない。
(…最高に愉しい宴だ)
鍾鬼の口端から、歪みに歪んだ厭らしい笑みが漏れる。
一人は丸腰で、一人は刀を構えて対峙する。
薄い鼓膜が破れそうな緊張感と静寂。
―――破る音は、血を求める狂気だけに止めながら。
攻撃自体が届かないわけではなかった。
鐘鬼の蹴りは真醍の頬を見事に変形させ、真醍の刀の切っ先は鐘鬼の脇腹を裂く。
「…っ、」
―――紙一重で、互いの狂気を避けていく。