AEVE ENDING
ド、…!
鼓膜を突いた轟音は、すぐさま雲雀に押し寄せた。
まるで雲雀が発した「音」に反応したかのように、先程まで各々行動していた生徒達が一斉に雲雀へと押し寄せる。
―――その目は開かれてはいるが、虚無を映し、無言のままただ複数の肉体が擦れあう音だけがテラスを支配した。
集団心理を突いたかのように、雲雀目掛けて雪崩れる、という全く同じ行動に出た生徒達を黙認するや否や、周りを囲まれていたせいか、或いはわざとか、雲雀はあっさり群衆に流されてしまった。
攻撃するでもなく、ただ肉の塊で行き場を塞ぐ。
しかし雲雀は、もみくちゃにされながらも髪の毛一本乱さない。
「…なんなの?」
大人しく、寧ろ抗う意味すらないと、人の波に揉まれながら雲雀は呆れたように息を吐いた。
(昔あった遊びの、なんて言ったっけ。……おしくらまんじゅう、じゃあるまいし)
馬鹿馬鹿しい―――否、あまりに幼稚だからこそ、脱出する気も起きないのだ。
不規則にあちらこちらへと流れては揺れる肉の群れの中心で、やはりあちらこちらへと流されながら―――倫子がいればきっと喜ぶだろうと思わせるほど遊戯的な―――辺りを見渡せば、見覚えのある顔と目があった。
ただ無心に操られている群れには参加せず、たった今、このテラスに辿り着いたらしい青年。
上がってきた階段の先、目の前で繰り広げられている二十数名の奇怪な行動に驚いているようだった。
「…雲雀さん!」
しかしすぐさま正気を取り戻し、群れの中央で揺れている雲雀に声を掛ける。
赤銅色の癖っ毛が風に靡いて、彼らしい爽やかさを醸し出していた。
「手助けになるかわからないんすけど、奥田って保健医に言われてヘルプしにきました」
なんの会話だ、と思わずにはいられないが、雲雀はそれには気にも止めず、ある単語に反応した。
奥田。
奥田たきお。
いけすかない男、厄介な相手、お節介が煩わしい。