AEVE ENDING
「なんだこの部屋」
一介のアダム生徒にここまで?
部屋を間違えたとか?
いや、たった今カギ開けたわ。
「僕だからね」
未だかつて見たこともない豪奢且つ瀟洒な部屋にただただ目をひんむく倫子の横で、雲雀は事も無げにそう言い放った。
「ぼくだからね?」
絶句したままおうむ返し。
雲雀が何を言っているか、倫子には理解できない。
「…権力者の子息に相応の待遇をした結果が、これなんじゃないの」
頭の悪い倫子を横に、雲雀は冷ややかに言葉を直した。
「…ふうん」
権力者か、権力者ね。
…グッジョブ、権力。
(こいつとペアで良かったかもしれない…)
ゴクリ。
こんな部屋に住めるなんて思ってもみなかった。
一生縁がなかっただろう贅沢。
それがまさか、この男と組むだけで手に入れられるとは。
(プラスだ。マイナスの二乗がプラスになった)
「…さっきまで文句ばかり言っていたのに。単純な上になんて安上がりなの」
瀟洒な部屋に目を奪われながら、意地汚い事を考えていた倫子に雲雀から痛烈な一言が放たれた。
呆けていた頭が、その言葉にさっと冷えていく。
「…読んだの?」
倫子の両眉が、みるみるうちに近づいていって、とうとう間に縦皺ができた。
「流れてきた」
とても便利なアタマをお持ちだね。
浅ましい思考が流れてくるなんて、不快極まりないけれど。
そう吐き捨てて、雲雀は細いリボンを外しながらベッドに歩み寄った。
この豪奢な部屋に立ちながら、違和感がない。
品位、とはこういうものを言うのだろうかか。
そう素直に感心していると、ベッドに腰掛けた雲雀が倫子へ一瞥をくれた。
「入ったら。ドア、閉めて」
「…へいへい」
音もなく閉まった扉に後押しされるように、倫子も部屋に足を踏み入れる。
既に雲雀は我が物顔で寛ぎモードだ。
倫子はくるくると天井を仰ぎながら部屋を見てまわる。
雲雀はそれを気に止めた様子もなく、寧ろ視界から完全にシャットアウトして、ベッドに腰を下ろし休息をとるように瞼を閉じた。
外はじわりと暗さを増し、遠くでは稲光が走っている。
雲は厚さを増し、明日の天候も悪そうだ。