AEVE ENDING
「…、」
キィ、とひときわ高く鳴いたドールを一瞥し、脇腹に腕を巻き付け拘束しているドールに眉を寄せる。
「…痛い」
キリキリキリキリ。
見れば雲雀の皮膚を裂いて巻き込まんとしているのか、内側に凹凸のある腕と足を絡ませ、ギチリ、と拘束していた。
―――づ、と皮膚が裂ける音と共に血が垂れるが、雲雀は眉ひとつ動かさないまま微動だにしない。
「雲雀っ!」
遠目でそれを認めた倫子が叫び、雲雀に駆け寄ろうとする―――が、それが無意味だとすぐさま足を止める。
(マリオネットは自らの意思で動いてるわけじゃない。マリオネット本体を操ってるのは、)
首を巡らせ、祭壇に立つ桐生に焦点を合わせる。
良く見れば、微かに動いている指先。
(傀儡の糸―――)
「…邪魔」
バチンッ。
雲雀が自らの体に電流を流す。
勿論、密着していたマリオネットにも電流は伝い流れ、感電したそれはかくりと力を無くした。
しかし、それを狙っていたかのように、あとの二体が雲雀に飛び掛かる。
「…、」
掲げられた指の第一関節から先には鋭いナイフが光り、今にも雲雀の血肉を裂かんと迫っていた。
それを避けようと足を動かすが、先程砕け散ったマリオネットの残骸が、まるで鎖のように雲雀の足首、胴体、手首に絡み付いていて身動きが取れない。
雲雀は舌打ちし、絡まる鎖の合間から開いた掌に力を込めた。
ジワリと能力の箍が外れていく様に、背中が粟立つ。
「…、」
―――が、もう少しで、というところで雲雀は集中させていた力を霧散させた。
力を多少解放すれば難なく回避できるが、しかし、それに倫子の肉体が耐えられるかどうか。
その一瞬の躊躇が、雲雀の体を引き裂こうと隙を作った。
「―――、…ひばりっ!」
倫子の悲鳴が響き渡る。
ナイフが風を切る音―――しかし、マリオネットの攻撃はいつまで待っても雲雀に届くことはなかった。