AEVE ENDING





(…雲雀は、今頃なにしてるだろう)

そういえば、怪我を負わせたのだった。
そして、怪我を負わされていた。

白磁の皮膚が裂けて赤い血が舞うさまは、どこか淫靡で、艶やかに、美しい。


(きれい、きれい、……きれい)

その姿さえ、魅了してやまない。

だからこそ、この継ぎ接ぎの体が恥ずかしかった。
雲雀を殺さんと身代わりを立てて、殺してしまったその心が恥ずかしい。

このまま、心地好いまま死ねたらと、弱い心は歌うように願う。





「―――…っ、」


自分の寝息が耳についた。

ぽたり。

薄目を開ければ、丁度、水面に弧が描かれたところ。
きれいなものだと、寝ている脳味噌で考える。

―――じわりと皮膚に滲む、どす黒い赤は。

ゆっくりと、意識が墜ちていく。
暗い底に、赤い泡にまみれて。


(あぁ、ひばりの声が、聞きたい、な………)

底に揺れる意識のなかで、唯一の灯かりは、そう、心底から、細胞に埋めつけられた域で、憎らしくあった、のに。




カチャ…パタン。





「!」

耳についたその物音に慌てた。

(……あぁ、また眠っていたのか)


「うう、寒い、眠い、ダルい」

随分と寝ていたのだろうか。
湯船に張った湯はかなり冷えていて、肌を刺すほどではないが、寒気を覚える温さにぞくりと身震いする。



カチャ…。

再び、物音。



(…誰?)


―――真醍、は考えにくい。

例え意識が戻っても、ササリの監視下では指一本とて動かせない筈だ。

鍾鬼も然り。



(…じゃあ?)

ドクリ、と心臓が跳ねた。

無意識に反応したそれは、まるである種の期待のようで。

ゆっくりと浴室の扉を見る。





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