AEVE ENDING
「っ、!」
次の瞬間には視界が一転。
雲雀の腕一本で浮き掛けていた体が横倒しに倒れた。
衝撃は軽い。ベッドの上だ。
「ゲホッ…」
やっと補給出来た酸素を勢い良く吸い込む。
酸素濃度の足りない頭で雲雀を探せば、愉しそうに口角を釣り上げてこちらを見下ろしていた。
(…投げ飛ばしやがった)
しっかり睨みつけようにも、咳が邪魔して表情が定まらない。
(クソッタレ…!)
激しい息切れの最中、苛立ちのあまり舌打ちが漏れる。
「噛みついてくる野良犬を躾なおすのも、存外、面白いかもしれないね」
そんな屈辱的な言葉を吐かれて、形のいい爪で頬を引っかかれた。
糸が解れるように裂かれた皮膚がぴくりと痙攣する。
「…誰が野良犬だよ、この高飛車スズメが」
精一杯の悪態をついたつもりが、余裕の表情で嗤われた。
くすり、と猛禽の嘴から洩れる高圧的な笑み。
(…綺麗過ぎて腹が立つ)
産まれついての差だ。
やはり神様は贔屓なさった。
ぶすくれた倫子は、ふとあることに気が付いた。
「いやだから、プライバシー云々の前にこの部屋の差は、なに」
まるで互いの実力のように埋まらない差のようだとは、悔しくて口にしなかった。