AEVE ENDING
「…どうだっていいんだ」
橘をこの手で生かせるなら、それでいい。
そう考えてしまう自分に、呆れてしまうけど。
「どうでもいいんだ。橘の過去も、その過去に僕がどう絡んでいても、橘がなにを思っていても。人類の計画もアダムの陰謀も、産み出された橘という名の肉塊も、僕には関係ない」
―――寧ろ、感謝したっていい。
「橘は、僕のものだよ。生かすも殺すも僕がやらなきゃ気が済まないし、―――僕から逃げるなんて、赦さない」
泣き喚きたいなら泣き喚けばいい。
どんなに絶望したって、自由になんかしてやらない。
―――橘が、いればいい。
「…やだ」
一世一代、というかもう、こんなこと、この先言うことなんてないだろうに。
返ってきた否定的な答えに、雲雀は思わず倫子を睨みつけた。
「撲るよ。この期に及んでなにを」
脅すように低く言えば。
「…だって、きたないもん」
今にも泣き出しそうな顔で、そうのたまったのだ。
「は?」
不愉快だと眉を寄せれば、萎縮していた体が更に小さくなる。
「こ、こんな、つ、継ぎ接ぎだらけで、きたないし、よ、弱、いのに、」
それは、涙交じりの無駄な訴え。
「…君、ほんとに馬鹿だね」
呆れて物が言えない。
あぁ、なのに、馬鹿みたいに。
(…僕も大概、馬鹿だ)
馬鹿みたいに、可愛い、なんて。
その継ぎ接ぎだらけの小さな体を真っ白のシーツに押しつけて、驚愕した間抜け面を上から覆い被さり、見下した。
近距離。
勢いではだけたバスタオルから覗く、やはりまだ黒が沈着したままの施術痕の鎖。
青白い肌は、冷えたせいか。
上下する胸に血管が浮き出ている様が酷く煽情的で、気持ち悪い。
「…、な、なに?」
ひくりとひきつる唇はかさかさに荒れて、今更、なんでこんな生き物なのかと、自分の悪趣味さに呆れた。