AEVE ENDING
―――結局、東部西部アダムの各パートナーとの顔合わせと部屋の割り当てが終わったのは、空が夕陽に赤く崩れさった頃だった。
その時刻には既に、「修羅」のパートナーが誰に決まったのか、宿舎中に知れ渡っていたわけで。
コンコン…。
夕刻五時が過ぎた頃、それは始まった。
「……」
コンコン。
「……」
ベッドにのびのびと腰掛け、古書を片手に寛いでいた雲雀はノック音にちらりと視線を流す。
なににって、勿論、ルームメイトに向かって、だ。
コンコン。
しかしバルコニー側の窓に背を預け体育座りをしている倫子は動かない。
コンコン…。
「ねぇ」
雲雀が口を開く。
視線は古書に置いたまま、長い睫毛すら動かさずに。
「出たら」
その決定的な言葉で、倫子はやっと立ち上がった。
のろのろとドアに近付き、さも出たくないと言いたげに。
しかしその間にも規則正しいノック音は続いている。
「…へーいへいへい」
緩慢な動き。ここ数分、何度も何度も繰り返している動作に覇気が出るわけもなく。
鍵を開けてノブを捻れば、自然と開く扉。
倫子がウンザリとした表情そのままに八度目の訪問者を見ると、そこに立っていたのはやはり東部のアダムだった。
(今度は東部同士のペアか…)
確かこの二人の前は東部と西部それぞれ一人ずつのペアだった。
その前は西部二人。
その前は朝比奈雛ひとり。
「…なんのごよーでしょうか」
きっとこの訪問者達も先に訪れた彼らと同じ事を言うのだろう。
考えるだけで頭痛がしてくる。
「あなたが、タチバナミチコ?」
長身の、品のある顔立ちの青年が倫子を見た。
「なに、そのカタカタ読み。おまえ何人だ」
先程から苛々が募っているせいか、初対面相手のあまり意味のない部分に対して突っかかっている。
感情を剥き出しに反感を買う倫子を見ながら、雲雀は部屋の奥で溜め息を吐いた。
(…馬鹿だね、わざわざそんな口をきくから、相手の態度が激化するんだよ)
今までの訪問者達はすべて倫子の生意気な口調と態度に腹を立て、勢いに任せて散々倫子を罵ったあと、憤りのままたまに殴り、そのまま部屋を後にした。