AEVE ENDING
「おー、タチバナー。元気かー」
真醍と呼ばれた金色が、にかりと笑ってこちらへと歩いてきた。
倫子に抱かれている形でも、真鶸にとって彼はとてつもなく大きくて、思わず心臓が跳ねる。
「怖がってんじゃん。近付くな、猿」
「ひでぇなぁ。怖くねーぞ、坊主」
「坊主言うなよ」
ケラケラ笑う倫子と真醍の間に、黒髪の鍾鬼が割って入ってきた。
「それはなんだ?」
どうやら倫子に抱き上げられている真鶸を指しているらしい。
切れ長の綺麗な眼が鋭く真鶸を捉え、思わず倫子にしがみついてしまった。
(だって、なんだか兄様に似てるから…)
「迷子。あんたらがこんなとこで喧嘩してるから脅えてたんだよ。迷惑だな」
真鶸の頭を抱えながら、倫子は威圧的な二人をものともせず喋っている。
(倫子さん、かっこいい…)
「「悪かったな、坊主」」
真醍と鐘鬼は困ったように真鶸を見ると、二人声を揃えて素直に謝った。
喧嘩するのは似た者同士だからなのだと倫子が耳打ちしてきて、真鶸はなんだかとても楽しくなって笑ってしまう。
「……」
「……」
そうすると、何故か倫子と真醍が顔を赤くした。
(―――何故?)
「ていうかこいつ、誰かに似てね?」
真醍が真鶸の顔を覗き込む。
恐怖心抜きで向き合えば、真醍はとんでもない美丈夫だった。
(兄様にしても真醍さんにしても鐘鬼さんにしても、圧倒的な美貌を欲しいままにしている……)
倫子はどちらかと言えば普通だが、誰より親しみやすく、なにより可愛くて屈託なくて優しい。
明け透けに笑う倫子の顔が一番好きだと、真鶸は思った。
「似てるよね、誰に、とは言わないけど、似てるよね」
真醍の言葉に倫子も思わずと言った態で食い付く。
鐘鬼は我関せずを決めこんでいるのか、先程吹っ飛ばしたナイフを取りに向かっていた。