AEVE ENDING





「ここ、ですか…?」
「他にどこがあるの」

真鶸は思わず目を丸くした。
この類の部屋は見慣れているが、まさか収容所である箱舟に存在するとは。

しかも、兄の部屋という。


(差別…!)





「区別だよ」

そう言うと、雲雀は既に真鶸の荷物が運び込まれた部屋へと入ってゆく。


「…あの、僕もここで生活するんですか?」

あまりのことに、間抜けな問いかけをしてしまった。


「別にどちらでも。嫌なら別の部屋を用意させるけど」

シルクのキングサイズベッドが中央に据えられたその部屋は、やはり一生徒のものとは思えない。

「…考えておきます」

アダムとしての実績もなにもない新米の自分が、こんな部屋で生活なんて―――ましてや、皆が憧れる修羅と朝昼夜生活なんて、いくら兄弟(あにおとうと)とは言え、気後れしてしまう。

雲雀の洗練された雰囲気がよく溶け込む、柔らかで美しい部屋。
よく磨かれた床にぽつんと置かれた少ない真鶸の荷物は、今まさにこの状況に置かれた自分自身のようだった。



(…ええと、荷物は)

不相応とはいえ、今はこの部屋しかない。

荷物を片付けるべく、ぐるりと視界を巡らせば、真っ白い壁に溶け込んでしまいそうなささやかなノブを見つけた。

(クローゼットかな?)

荷物をとく為にも、歩み寄って手を伸ばす。



「―――開けないで」

が、寸前で止められてしまった。
キッチンに引っ込んでいた雲雀が紅茶を片手に窓際のソファへと腰掛けている。


「…後悔するよ」

雲雀が言うと、何故だか根拠もなしに納得してしまうから不思議だ。

真鶸はそこになにが広がっているのか大変気にはなったが、好奇心に負けて雲雀に反するなど馬鹿げている。




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