AEVE ENDING
「ぎゃあっ…っ、!」
また悲鳴。
(止めなきゃ!)
「…っ兄様!やめてくださ!」
バターン!
勢い良く扉を開ける。
縦に長い全面ガラス張りのそこは、ある種の空中庭園のようだった。
そしてドアを開けて右側に置かれたベッドに、重なりあう男女の姿。
「ぼ、暴力は、……」
雲雀は女の脚の間に右膝を据え、覆い被さるように背を曲げていて、そして。
「ぼうりょく…は、…」
その唇は、女の唇をしかと塞いでいた。
お口とお口が合わさって…。
(ちゅう…?)
頭の中で「ちゅう」という単語が泳ぎ回る。
ちゅう、キス、接吻、口付け、ぼうりょく…は、違う。
乱入した途端、固まってしまった真鶸を横目で見やり、雲雀はわざとちゅう、と柔らかな音を立てて女性から離れた。
(やっぱり、ちゅう…!)
雲雀の影から逃れ、午後の明るさに露になる女の顔がはっきりする―――。
「み、みちこ、さ…」
ざんばらの髪を乱しに乱し、ベッドへと押し付けられたその人はまさしく、迷子の真鶸を救ってくれた女、橘倫子、その人だった。
そうして倫子は、涙目で真鶸の姿を。
「……、」
見て、動かなくなった。
石像と化したそんな真鶸と倫子に、雲雀が溜め息を吐く。
「…全く、邪魔ばかり入るね」
真鶸達を気にした風もなく、雲雀は独り言か或いは倫子に語り掛けているのかわからない一言を漏らした。
まじゃ?
…混乱。
まったく、じゃまばかりはいるね。まったく、じゃまばかりはいるね。まったく、じゃまばかりはいるね。
―――邪魔。
「……きゃあ!」
·······
そういった空気の邪魔をしてしまったのだと、やっとこさ理解する。