AEVE ENDING
(…迷惑な話だなぁ)
倫子は思わず雲雀に同情した。
だってそうだろうに。
少なくとも。
「…雲雀は、自分をカミサマだなんて思ってないんじゃないの?…まぁ、アンタらが雲雀を特別視するのは勝手だけど、雲雀をダシにして自分達に陶酔しちゃってるのはどうかと思うよ。つーかぶっちゃけキモイ」
別に、雲雀を庇護するわけじゃない。
倫子の容赦ない言葉に、訪問者達は虚を突かれたらしかった。
目を丸くしたまま、言い返すことも出来ない。
「それに私、奥田には逆らえないんだ」
そんな彼らを前に、倫子はただ淡々と、世間話を繰り出している。
訪問者達は、倫子の鈍感ぶりにやはり呆けたままだ。
「だからさ、諦めてよ。雲雀が私のパートナーになっちゃったのは、奥田センセーの采配だしさ。いやー、私もね、あんな傲慢で乱暴で凶悪な男とペアっつーのはどうも不安なんだけど仕方ねーじゃん?奥田センセーの能力を一生徒の私ごときが疑うわけにはいかないし。いや、あの性格は疑うべきなんだけどね。ま、あんた達も頑張ってください」
にっこり。
「ばいなら」
パタン。
(―――よし、馬鹿共が呆気にとられてるうちに回避出来た)
再びノックされても、もう決して開けはしまい。
まんまとあしらわれてしまった訪問者たちが立ち尽くしているであろう扉を、倫子はにいまりと見つめた。
「…言い切ったね」
ひとりほくそ笑んでいた倫子に、背後からすゞやかな声が届く。
視線を巡らせば、古書を置いてこちらを見遣っている、「カミサマ」。
「なにが?」
その端正な顔が緩やかな笑みを浮かべているのに気付き、倫子は不可解だと顔をしかめた。そこで気付く。
(…しまった。その気はなかったのに、結果的に庇ってしまった)
今更気まずくなり、倫子は雲雀を睨み付けた。
決して照れ隠しなんかじゃない。