AEVE ENDING
(僕と兄様って、そんなに似てないかしら)
「…弟って、え?私の?」
「なんでそうなるのさ」
バシーン。
「ヘブッ」
「きゃあ!倫子さんっ」
「病人は寝てたら」
「…み、倫子さん!大丈夫ですか!?」
兄と弟でここまで性根の優しさに差が出るってなに?と倫子は死の淵で考えた。
「倫子さ、」
「行くよ、真鶸。馬鹿が移らないうちに」
雲雀に肩を抱かれ、部屋から出ろと促される。
しかし真鶸は、踞ったまま動かなくなった倫子を置いてはいけなかった。
「兄様…!倫子さんが!」
悲鳴を上げるように叫べば、雲雀は呆れたように溜め息を吐いて足を止めてくれた。
「全く、どこで餌付けしたんだか」
そうして真鶸が部屋へ戻るより早く倫子のもとへ歩くと、ぐったりと倒れ込んだ身体をさらりと抱き上げてゆっくりと枕へと頭を乗せて横にする。
(さっきはあんなにバシバシ殴っていたのに…)
事の他、丁寧に扱うその様に真鶸は驚いてしまった。
「―――橘」
額に張り付いた髪の毛を解いてあげながら、雲雀は倫子の顔を覗き込んだ。
「ん、」
完全に体力が底をついてしまったらしい倫子は、力なく熱にうかされた目を開ける。
思っていたよりずっと辛そうで、なんだか真鶸まで頭痛がしてきた。
「真鶸、薬を」
雲雀の言葉にハッとして踵を返せば、粉薬はいやだ、とごねた声が背中にぶつかる。
(やっぱり、倫子さんは可愛い)
結局、散々嫌がった倫子を雲雀が説き伏せ、というか撃沈させ、粉薬を飲ませることに成功した。
カプセル型の錠剤も存在するにはするが、真鶸はカプセルのほうが苦手なため手持ちがなかった。
(ごめんなさい、倫子さん)
「どれだけ効くかはわからないけど」
雲雀が意味深な発言をしたが、倫子が咳を繰り返したため、問い掛けるタイミングを逃してしまった。