AEVE ENDING
とは言っても、真鶸も倫子の容態は気になるところだ。
雲雀の後を追うように立ち上がったところで―――ガシャン―――聞きなれない破壊音が聞こえた。
見ればそれは、回廊へと出る扉から。
「ま、」
半開きのドアを開けた状態のまま立ち尽くして真鶸を凝視しているのは、長い髪が美しい女。
(倫子さんより年上か、同じくらいの…)
そんな彼女の後ろに立っているのは、依れた白衣が印象的な、なんともやる気のなさそうな男で、咥えた煙草をプラプラと上下させ、なにもかも見通しているように真鶸を見ている。
「ど、どちら様ですか…?」
なんとも怪しさが漂うが、一先ずはそう尋ねてみた。
雲雀の部屋にノックなしで訪れるくらいだ。
きっと兄の友人だろう、と目星をつけて。
―――けれどやはり、女は唖然としたまま口を開こうとはしないし、白衣の男は精気のない顔をにやりと歪めて笑うだけだけだった。
(こわい…)
「あの」
倫子の部屋へ引っ込んでしまった雲雀は、気付いているだろうに我関せずで、助け船は期待できそうもない。
とにかく、何用かと伺えば。
「ま、まさか、こここども…!」
意味不明な言葉が返ってきた。
「こども?」
あまりの不可解ぶりに、思わず復唱してしまう。
「倫子と雲雀くんの、ここここ、こども…!」
―――え?
「あらまぁ、かわゆいねぇ」
白衣の男が、にいまりと笑う。
その言葉を聞いた女が、肩を飛び上がらせて蒼白になった。
「そそっ、そんな、こども、こどもって、だって、あの子まだ十七、八よ!?」
「昔昔はねぇ、アミちゃん。十六歳で結婚できたのよぅ」
「い、いや、でも、計算が……」
「なんてったって雲雀くんがパパンならこんな奇跡も有り得るんじゃないかなぁ。見て、あの高貴な顔立ち。パパンそっくりじゃない」
ど ん な き せ き で す か!
独特の会話が繰り広げるふたりを前に、真鶸はただ目を丸くするしかない。
「ね、ねぇ君…!な、名前は、」
ずかずかと部屋に入ってきた女が、真鶸の肩をぐいと掴む。