AEVE ENDING
「僕が、神ではないと」
雲雀から飛び出た言葉に、倫子がぽかんと呆けた。
「…あんた、神様のつもり?」
まさか、そんなまさか。
これじゃあ私が嘘を吐いたみたいじゃないか。
「まさか。少なくとも、僕には」
雲雀の口端が、嗤う。
「神すら足元に及ばない、とでも言うんだろ、ばかが」
くすり。
「そうだよ」
皮肉を返したつもりが、あっさり肯定されて返答に詰まってしまった。
神様、この傲慢過ぎる男に天罰を。
「…あんたは神様じゃない」
ふと見れば、空は鮮やかに色を変え、闇色の青が朱を支配していった。
淡いそれを受けて、雲雀の漆黒が不可思議な色味をもって反射する。
「少なくとも、善意あるお優しい神様じゃないのは確かだわ」
強いて言うなら悪神だ。
倫子がそう言えば、雲雀はその柔らかく鋭い双眸をじわりと細めて見せた。
「悪神呼ばわりもいいけど、君の言いなりも不愉快だね」
お仕置きだよ。
すくりと立ち上がったかと思えば、耳元でそう囁かれた。
夕刻五時半頃、西部宿舎の最も奥に位置する、神と落ちこぼれにあてがわれた部屋から悲鳴と罵声が響いたとか、響かなかったとか―――。