AEVE ENDING







(嫌われたらって…)

嫌っていたのは倫子のほうの筈で、寧ろ嫌われていたほうがずっと気が楽だったのに。
過去をぶちまかれて赦されて泣いていたけれど、まだ。


(…雲雀が、知らないことがある)

それを無視して私は、雲雀に触れることができるのか。

(―――触れてもらえないことに不満なのは私のほうか…。いや、いやらしい意味じゃなくて)



「いやらしい意味で、触って欲しいんじゃないの?」
「いや、それはともかく、…うが、」
「なに、その奇声」


そりゃ奇声も出るわ。


「頭ん中読むなよ!」

立ち上がった雲雀に抗議する。
先程まで孤独の象徴でしかなかった冷たい床が、火照る身体に気持ちいい。

「好きで読んでるわけじゃない」
「私だって好きでストリップしてんじゃねーよ」
「ストリップってなんですか?」
「は?いやだから、ストリップってゆーのは……」


あーあーあー!


「真鶸は知らなくてよろしい!」

見れば手にトレイを持った真鶸が部屋の入り口に立っていた。

トレイの上にキャンドルがひとつ。淡い光に照らされた真鶸と雲雀は、息を飲むほど綺麗だ。


「ちょっと失礼しますね」

真鶸の小さな手が、倫子の額を撫でる。

「…冷たい」

ひたり。
マシュマロみたいな手が、心地好かった。
雲雀はどちらかと言えば節くれだった美しい骨格標本みたいな手をしてるから、真鶸とは似てないな。


―――でも。




「兄弟そろって、体温が低いね」

ひんやりと冷えたそれは、共通のものだ。

変なとこ、似てる。

笑えば、真鶸が目を丸くしてはにかんだ。
兄に似てると言われて、嬉しいのだろうか。

(…かわいい)






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