AEVE ENDING
「きなまぐっさいなぁ」
そのなんとも薄気味悪い提案に思わず眉を寄せると、興味のなさそうな雲雀がじ、と倫子を見る。
「…まぁね。でも結局、腫瘍が完全に成長する前に除去できるならそれが一番だから」
(…腫瘍か、)
うちに孕み毒となる、塊。
「やな言い方」
「言い得手妙ですね!」
倫子と真鶸の声が重なる。
それも正反対の台詞。
つい、真鶸を見やれば。
「すっすみません…っ!」
何故か全力で謝罪された。
よしよしと頭を撫でる。
手触りのいい髪も、雲雀と一緒だ。
雲雀にこんなことしたらはたかれるだろうけど、真鶸は嬉しげにはにかんでくれる。
(弟達のこと、思い出すな…)
ねーちゃん、鼻血出そう。
「…でも、それが実施されるとしたら」
倫子の手をそのまま頭に置きながら、真鶸が不意に雲雀へと視線を向けた。
言いにくそうに唇を躊躇させて、意を決したように。
「兄様にはきっと、一番の監視がつくでしょうね」
それは確かに、喜ばしいものではない。
なにより纏わりを嫌う雲雀には、特に。
しかし、それにしては鍾鬼の時はあっさりパートナー交代を受けた分、どんなものだろうかと伺えば。
「蹴散らすから心配しないで」
物騒な。
いやしかし、雲雀が箱舟に在籍している今、それが実施されるということは。
「実施開始は約一月後。身内から出た不祥事を隠す簔になるわけもないのに」
軽蔑したような声で雲雀が吐き出した。
何事にも淡白な雲雀が、珍しい、と思いつつ。
(新制度交流セクション…か。またパートナー交代、なんて、やっぱなるかなぁ…)
それは嫌だ、と考えてしまう自分が嫌だった。
この際、このかわいい弟分である真鶸とも離れたくないし、―――雲雀とは、尚更。