AEVE ENDING
「真鶸、飲んだら朝飯、食いに行こう」
カップを受け取りながら誘えば、愛らしい花が綻ぶように笑う。
「はい!…あ、でも兄様が、」
自分のことより先に雲雀が出るんだがら、真鶸は真正のおにいちゃん子だ。
「アイツなら大丈夫大丈夫」
一方、倫子は適当である。
「アイツ…、兄様をアイツ呼ばわりできるのは倫子さんだけですね」
感嘆された。照れる。
「…でも、そうでもないなぁ。真鶸も会ったでかいサルと長髪男も、雲雀のことアイツ呼ばわりするよ」
ただ単に、三人の口が悪いだけなのだが、それを指摘できる人間がここにはいなかった。
紅茶にミルクを注ぎながら、桐生の一件以来、何故か仲がいいバカコンビを思い出す。
素直に聞いていた真鶸は、呆気に取られたのか大きな目を丸くした。
「…あの人達は、兄様の、」
「友達」
雲雀にしてみれば大変いい迷惑だろう一言を倫子が断言すれば、真鶸は更に驚いたように口を開けた。
「ともだち…」
なにか考え込みながら、ぽつりと呟かれた言葉。
その意図に、なんだかもう、笑うしかない。
「あんたにもすぐできるよ」
ヨシヨシ。
撫でてやれば、やはり頬を赤くして照れた。
(雲雀が照れると、こんな感じだろうか?)
有り得ない想像をしつつ、真鶸のことを考える。
(…そりゃ、不安もあるよな。初めての箱舟で、兄は修羅なんて呼ばれるカリスマ、友達だって周りは年上ばかり、プレッシャーも心細さも)
だから尚更、倫子といれば敬遠されかねない。
落ちこぼれイヴとふたりで歩いていたとして…。
(…修羅信者が弟君の危機を救おうとやってくるか、或いは真鶸を完全に腫れ物扱いして話し掛けもしないか)
どちらにしても、真鶸のプラスには作用しないなぁ。
食堂へ行こうと誘ったのはいいが、良く考えれば、真鶸にはあまりよろしくない提案だったかもしれない。