AEVE ENDING
「今回は試験的なものだけど、相手の米国は精鋭を用意してる。近くにいるだけでお前の体を蝕むような奴等が、ゴロゴロやってくる」
―――米国。
人類史上初の新人類アダムの誕生を偶発的とはいえ日本に先越されたためか、その研究については最先端をいく。
人工アダムの発案を最初に行った国ではあるが、世界中からモラル批判を受けたため、今ではその事項について一番の牽制国となっていた。
大統領交代によりその動きは更に高まり、今ではアダムへと真摯に向き合う姿勢を評価されている。
今ではアダム大国日本に負けず劣らずの実績を上げ、アダム人口は少数ながらも、その高い実力を確立するための制度は他の追随を許さない。
「あちらさんも日本を相手取ったプレゼンテーションだからね。気合い入れてるみたいよ」
やる気なさげに奥田が言う。
新人類アダムに関しては、同盟を結びながらも未だ他国間で抗争が続き、更に水面下で激化していた。
「その中でも、最高位に立つアナセスって女の子が、米国が抱える世界最高のアダムらしい」
―――アナセス。
初めて聞く名だ。
「聞いたことないのも無理ないわ。今までは深窓の神だったのよ。このセクションが決定した途端、国を上げて彼女を全世界へ向けて押し出した……大した宣伝文句よね、盲目のマリア·アナセス」
「確かに仰々しくはあるけど、その実力は正しく未知数。雲雀くんと同等、或いはそれ以下かそれ以上。未だ成長を続けてるってんだから、畏れ入るよ」
修羅の隣に立って遜色しない唯一のアダムだと評価されている―――。
(雲雀の隣…)
それほどまで、雲雀は特別なのだろうか。
それほどまで、皆から隔てなくてはならない存在なのだろうか。
(本人は一度だって、それを望んじゃいないのに)
「―――倫子」
奥田が倫子の気を引くように指を鳴らした。
まだ話したいことがあるらしい。
雲雀のパートナーになってから面倒が増えた、と心底から思う。