AEVE ENDING
「倫子さんっ」
倫子が奥田達と別れてすぐ、真鶸が飛んできた。
嬉しそうな笑顔に、少しだけ心臓が痛い。
(おまえみたいな綺麗な子が、慕っていい相手じゃないよ)
「…真鶸」
名を呼べば微笑み、頭を撫でれば頬を染める。
まっさらだ。
「よくここがわかったね。迷わなかった?」
からかえば、恥ずかしそうにはにかんだ。
「倫子さんの気配を探ってみました!さっき、兄様に探知の仕方を教わったんです」
にこり。
ヨシヨシ、お前は立派なアダムになるぞ。
「雲雀は?」
可愛い弟から目を離すような奴ではなさそうなのに。
見ない姿に首を巡らせば。
「兄様なら先に授業に向かうそうです!早く倫子さんを呼んでくるよう言われました!」
ああ、授業か。
忘れてた。
(桐生の一件以来、療養だ安静だと、セクションには参加してなかったからな)
初めての授業にはしゃぐ真鶸を頼りに、倫子は憂鬱になりながら授業場所へと向かった。
辿り着いた先は、やはり砂浜。
蟻のように働くアダム達が、各々の能力を活かし海洋清掃に取り組んでいた。
やはり見る限りでは、東部と西部の能力差は顕著である。
(…でもだいぶ、マシになったよな)
以前は毎日のようにサイコキネシスを使った闘争が起きていたのに、今じゃ寧ろ珍しいくらいだ。
東部西部混合のペア制度が効をなしているのだろう。
(…変化しつつあるんだ。雲雀や私と同じに、みんな)
それなのに、この爛れた体はそのまま、朽ちることも再生することもない。
「…っ」
ぼんやり水平線を眺めていると、真鶸が小さく悲鳴を上げた。
悲鳴とも言えない、小さな呻き声だったけれど。
「どうした?」
見れば、左中指の爪から出血している。
大した傷ではないが、内部から沸き上がったような傷跡に顔をしかめた。