AEVE ENDING
トクントクントクン…。
心臓が動いている音を久方ぶりに聞いた。
あの頃は、それすら私を感動させていたのに、今はその音が煩わしい。
「橘、どうかしたの?」
雲雀が、私を、見てる。
あぁ、そんなまっさらな目で、見ないで。
焦がれてしまうから。
お前に、お前の美しさに、お前の真っ白さに。
対等でありたいのに、叶わない。
「…なんでもない。ちょっと、立ち眩み」
精一杯、普段通りに装って、そう吐き出した。
「立ち眩み?」
拙い嘘が雲雀に通じるかなんて考えも心配もしていなかった。
今はそんなこと、どうだってよかった。
「……真鶸、指は」
誤魔化すように、あぁ、見たくもない神の、もうひとつの紛いもの。
「あ、もう塞がりました!」
明るく答えた真鶸に仮初めの安堵をもらい、見れば、確かに何事もなかったかのように塞がっている。
怪我をした形跡すらない指に、深く安堵の息を吐いた。
(…治癒力が抜群に高い。私とはまた違う技術で造られたのか…、綻びも見当たらないし、実弟故か、埋め込まれた雲雀の能力との相性も悪くない)
―――私とは、違う。
大丈夫。
この子は、アダムだ。