AEVE ENDING





「……、」

雲雀が眉を寄せて倫子を見ていた。
勘の良い雲雀に隠し通せる自信など皆無だが、しかし、これだけは。

(それにまだ、確証だってない)

傷に関しても、真鶸のアダムとしての特異体質かもしれない。

(安易に結論つけるな。…まだ、早い)

そうだまだ、早すぎる―――。




「倫子さん…?」

あぁ、真鶸が心配してる。

いつも通りにしなきゃ。

雲雀が、見てる。





「真鶸、行くよ」

無様に硬直したまま動かない倫子の腕を、雲雀が乱暴に引いた。

ズルリ、雲雀の綺麗な手が腐敗して熔けてしまうような、錯覚。


「…っ、」

恐ろしくなって振り払った手はぶらり、麗しいままだ。

「…なにがしたいの?」

雲雀が苛ついた声で不機嫌に唸る。

わかってる、不可解な真似をしてる。

わかってる、…わかってよ、雲雀。



「…気分悪い、から、後で行く」

息ができない。

嘘にまみれた言い訳に、雲雀は面倒臭そうに溜め息を吐いた。
心配する真鶸を連れて、倫子へと背を向ける。


ドクリドクリ脈打つ心臓は、停まることを知らない。




「ひば、り」

呼んで、どうする気だ。

喉を焼くような痛みが、なんの助けになる。

竦んだままの脚はやはり動かないまま、周囲は多くの生徒達で賑わっているにも関わらず、まるで。




『独りで死ねばいい』


宣告された罪の名は、未だ私の胸を苛み、無駄に深く牙を立てている。






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