AEVE ENDING
明らかに奥田の策略だというのに、それに巧く乗せられたことも気に入らないし、大体、仕組まれた関係なんぞに、今更、揺らいでどうする。
憎むべきは彼じゃない。
憎むべきは、彼じゃないのだ。
「…まぁ、なんとかする」
考えたって、なってしまったものは仕方ない。
ポジティブさは変わらない倫子の言葉に、アミも満足げに微笑んだ。
「私ら、明日から別行動だけど、ガンバロ」
にかりと笑うアミに、倫子もにたりと笑い返す。
互いの拳をこつんと合わせて、友情を確かめ誓いなおした。
―――心強くあるのは、アミが居てくれるからだ。
(ありがとう、アミ)
照れ臭いから口にはしないけど。
それからはもう、ガールズトークに花が咲いた。
新しい互いのパートナーや、明日から始まるセクション、将来のこと、話しても話しても尽きない話題。
それが丁度、雲雀の盗み撮りポラロイドの話題に差し掛かった時だった。
「あ、」
「うげ」
対照的なアミと倫子の声が重なった。
思ったよりも長く部屋を空けていた雲雀が戻ってきたのだ。
無言のまま部屋に入ってきて、無言のまま備え付けのキッチンへと向かう。
ミネラルウォーターの瓶を片手に再び寝室に戻ってきて、アミの存在などなんのその。
ごく自然にベッドへと落ち着いた。
「…ただいまくらい、言えば」
(来客中なんだから、せめて)
その無愛想な態度に思わず倫子は注意したが、けれど雲雀はこちらをちらりと一瞥しただけ。
ムカッ腹マックスである。
(…へぇ、あの人、「天才」ってわけでもないんだね)
しかし、不意に流れてきたアミの思考に倫子は顔を歪めた。
(はあ?)
思わず性悪フィルターでアミを見る。
(だってあの人、トレーニングしてきたんだよ。ほら、汗)
アミに指摘され目を凝らせば、確かにその顔には軽い疲労と爽快感が見えた。
それから少しばかり血色がよくなった肌に、真珠のような汗の粒。
(…複雑だな)
(え?)
思わず吐き捨てた言葉にアミが首を傾げたが、倫子はなんでもない、と首を横に振った。
そんな人間臭いとこなんて、知りたくなかった、なんて。