AEVE ENDING





「まさか、また絡まれてるんじゃ…」

今にも駆け出しそうな真鶸を視線だけで制する。

数人のアダムに囲まれた倫子の頭が見え隠れしているが、まだそう深刻な事態にはなっていない。

なってはいないけど―――。


(今の橘の精神状態じゃ、限界かな)

真鶸をその場に留め、砂丘に上がろうとした雲雀の視線の端、倫子とそれを取り囲む生徒達に駆け寄ったのは、予想していなかった人物だった。


「兄様?」

歩みを止めた雲雀を、真鶸が訝しげに見やる。

その間も、予想外の人物―――梶本は肩を怒らせてその場所へと向かっていた。


「…、」

ろくなことにはならないだろうと、梶本を嫌う倫子の様子を思い出し一気に疲れてしまった。

倫子を取り囲んでいた生徒達といくつか話を交わした梶本は、倫子へと向き直った。
梶本の登場に、倫子の顔は既に人類を逸脱している。


「あ、あの人、教師ですよね?あぁ、良かった…」

梶本の登場に安堵した真鶸が胸を撫で下ろす。

安心したところ可哀想だが、全く以てその登場はよろしくない。

倫子と梶本が一言二言言葉を交わし、倫子を取り囲んでいる生徒達はそれを愉しげに眺めている。

見る間に声が大きくなっていく梶本に、真鶸は再び泣き出しそうになっていた。


「に、兄様、なにか様子が…」

生徒の指導役である梶本が問題を解決し、倫子を救い出してくれるだろうと考えていたのか。

真鶸は唇を震わせながら、雲雀の言い付けを守って必死に事のなりゆきを見守っている。





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