AEVE ENDING
ぎゃんぎゃん騒ぎ出した砂上のふたりに、砂浜に散らばっていたアダム達がそちらへと注目した。
罵詈雑言の限りを吐き出し合いながら、そろそろ倫子は限界だろう。
―――梶本の限界も。
バキッ。
「…橘の敵は、生徒だけじゃないよ」
小気味良い音が鳴ったかと思えば、倫子の小さな体が吹き飛んだところだった。
「倫子さん…っ」
同時、真鶸が悲鳴を上げて倫子へと駆け出す。
感情の赴くまま暴力を振るった梶本は、息も荒く下品に高笑いしながら砂浜に突っ伏した倫子を詰っている。
「わかったか、橘!貴様のような落ちこぼれが箱舟にいても迷惑なだけだ!今すぐ荷物をまとめて出ていけ!」
なにを勝ったつもりでいるのか。
意気揚々と叫んだ梶本に辟易する。
それは倫子も同じなのだろう。
無様に倒れる姿から、怒りに震える気配が伝わってきた。
梶本に便乗した火種の生徒達数人も、動かない倫子を見下して嘲笑う。
「なんなら俺たちが海に沈めてやろうか?」
「やめとけよ、海が可哀想だろ」
「言えてる。雲雀様にこれ以上見苦しいものを見せるわけにいかないもんな」
―――見苦しいのはどちらか。
不愉快極まりない会話を耳に、倫子へと駆ける真鶸の背中を見た。
慣れない砂に足を取られながらも、必死に倫子を目指している。
心底から心配しているその目に。
(なんで、あそこまで懐いてるかな…)
まだ会って二日目だというのに、真鶸の慕いようは尋常ではない気がした。
胸に掛かる靄を不快に感じながらも、雲雀は倫子へと足を向けた。