AEVE ENDING
こんな強烈な意識―――果たして意識と、曖昧な表現をしていいものか、オーラでも殺意でもない、倫子の体が纏うそれは、雲雀からすら感じたことないものだった。
サラサラときめ細やかな砂が、その頬を撫でていた。
乱れた前髪に見え隠れする表情は、なんの色味すら見当たらない。
どこか諦観が含まれる、排他的で愚昧ともいえる大袈裟なまでの強烈さに、心臓を鷲掴みにされるような感覚に陥った。
―――冷たい。
酷く冷たい眼差しの奥はなにも映したりはしないのに、その揺らぐ凶悪なまでの悪意、が。
「…っ、」
むくり。
サラサラと砂を滑らせながら、倫子が立ち上がる。
殴られたショックでか、ふらりと覚束無い足で砂を踏みしめる様はどこか異様だ。
半眼に降ろされた瞼から揺れる、少ない不揃いな睫毛は下を向き、真鶸を見ようともしない。
(―――これは、倫子さん…?)
目の前にふらりと揺れる、炎を纏った女が本当に倫子であるのか、わからなくなった。
ザラリ…。
耳に障る音が靴裏で鳴ると、曲げていた上体がゆっくりと露になる。
―――ゾクリ。
そうして上げられた視線に凍りついたのは、真鶸だけじゃない。
倫子を馬鹿にしていた連中は静まり返り、遠目で嘲笑っていた者まで息を飲んでいる。
―――こわかった。
こんな目が生きている人間に果たしてできるものなのか、…こわい。
(こわい、のに)
目が、逸らせない。
その焼ききれてしまいそうな視線を、真摯に向けられたいと。
美しい、とすら感じる、無機質。
「…、」
そうして硬直している梶本達に倫子が口を開いた―――。
そのゆったりとした動作にすら目を奪われて、煩いくらいに心臓が跳ねている。
そんな倫子に一瞥をくれたまま、唯一、平静であろう雲雀は、事のなりゆきを黙って見守っていた。
(…或いは、兄様も見惚れていたのかもしれない)
強烈な引力は退くことを赦さない。
罪悪なまでに純粋で、穢れている。