AEVE ENDING
(―――修羅だ)
それは兄にだけ赦された称号であった筈なのに、何故そう思ったのか、真鶸にもわからなかった。
ゆっくりと開かれた唇から覗く血塊のように赤い舌にすら、息を飲んで―――。
神が、口唇(くち)を開く。
「タッチバナアアアアア~ン!」
バシーン…!
それは、あまりにもタイミング悪く参入した。
金色の短髪を靡かせた大男が、凄まじい勢いで倫子にタックルをかましたのだ。
当然、体格差は勿論、完全に油断しきっていた倫子は空の彼方へ吹き飛んだ。
金色の男、真醍はそれを見やり、おおらかに笑い声を上げた。
「具合良くなったっぺか?久しぶりだなあ、タチバナン」
がはは。
明らかに場の空気を読んでいない。
真醍に続いてやってきた黒髪の異人、鍾鬼は呆れたように溜め息を吐いた。
「まだ病み上がりだぞ。無茶をする…」
さくり。砂を踏む白い靴はその雰囲気そのままに静かに音を立てた。
突如として騒がしくなった中心部に、硬直していた周囲の生徒達も徐々に我に返っていく。
「馬鹿だね…」
そうして雲雀の完全に呆れ返った声に、周囲はいよいよ通常へと戻り、騒動前のざわめきを取り戻していった。
問題は―――。
「…っのクソザルゥウウ!今度という今度は殺す!冥土の土産にバナナでも持たせてやるよ!だから殺らせろ!」
鋭い巻き舌と共に、顔面から砂浜に埋まっていた倫子が飛び上がった。
その姿がまさしく猿のようだったとは、真鶸に言える筈もない。
「んだとコラアア!誰がサルじゃボケェエエ!」
それに応戦する真醍は、完全に逆ギレ状態だ。