AEVE ENDING
「―――副作用だよ」
事も無げに言い放った奥田は、しかし口調とは裏腹に疲労しきった表情だった。
浜辺で倒れた真鶸を、そのまま倫子の指示でここ、医務室まで運んできてすぐ。
ベッドで眠る真鶸は、今は正常な呼吸を続け、奥田によればもう心配はないと言うことだった。
奥田と二言三言交わした倫子は、後は頼むと部屋を後にしたまま戻ってこない。
「副作用?」
空いたベッドに腰かける真醍が、珍しく神妙な顔を浮かべている。
―――当然だろう。
誰がどう見ても、あれは異様な光景だった。
死海の水をすする女の、口付け。
奥田は珍しく青ざめたまま、しかし、やはり表情は無機質で出来損ないのまま、口を開く。
躊躇いはなかった。
真醍も鍾鬼も雲雀も、知るべきことだったのかもしれない。
「俺や研究者達が開発した薬のひとつでね。…かなり強力な細胞構築剤、って言えばいいかな。遺伝子を組み換えた後の処置のひとつとして提案された、薬物での身体の安定を計ったんだ」
それは人体に多大な影響を与え、摂取量5mmでも違えれば死に至るようなもの。
「―――当然、完成と共に倫子に与えられた」
順調だった。
死にかけていた細胞は生き返り、なにより倫子が自覚するまでに不調が少なくなった。
肉体変化した後の継ぎ接ぎ痕もうまい具合に繋がった。
摂取し始めた当初は、怖いくらいに順調だった。
「―――でも、摂取期間118日目、それは起きた」
既にササリとのリハビリ期間に突入していた倫子の体が突然、崩れ落ちたのだ。
それこそ全身の骨が崩れてしまったかのように、脆く―――。