AEVE ENDING
「汚いんだ、私、…多分、あんたが思ってるよりずっと、汚い。あんたに触るのだって迷う。迷うし、傍にいたら辛いし、悲しいし、殺したくなるし、でも、わたし、あんたと、」
―――離れたくない。
眩、り。
(…あぁ、馬鹿は、僕もか)
その生意気な口を今すぐ塞いでやろうかと屈み、けれど不細工にはにかむ顔に留まり、半泣きで濡れた睫毛を拭いながら、そっと覗き込む。
「…酷い顔」
赤く腫れた目尻は痛ましく、けれど随分ときれいな赤色に染まっていた。
縒れた皮膚の、なんて憐れで醜くて、愛嬌のあることだろう。
「…見てんじゃねーよ、ボケナス」
至近距離でぶつかってきた悪態の仕返しに、触れそうだった鼻を噛んでやる。
ぎゃあと啼く悲鳴が、胸を焦がすほどに懐かしい。
殺したいならそうすればいい。
それに、罪を感じるならお互い様だ。
こうして触れている今だって、全て覆ってしまいたくて疼くのに。
(僕の望みは、)
きみのふこうとしあわせ。
「―――…、」
真っ暗な目が迫ってきた。
揺れる長い睫毛を羨ましく思いながらも、未だ震え続けている心臓に瞼を閉じる。
随分と、優しい。
唇の形すら歪まないほどの、触れるだけのそれに、倫子は妙に照れ臭くなった。
「アメリカから、また神様がやってくるんだって言ってた」
その白いシャツに縋りながら、ぽつり、至近距離で吐き出した。
全身を靡かせる潮風は冷たくて、それから庇うように立つ雲雀に、心臓を追い立てられながら。
「今の世界じゃ、神様はそう珍しくないみたいだ」
やはり至近距離で、視線を合わせたままの、綺麗な睫毛。
「ほんとだよ。あんたに鐘鬼に、そいつに、一体何人現れるかな」
「僕はカミサマじゃないよ」
…うん。
「知ってる」
だってあんたは雲雀だから。
私が模倣したのは、神様じゃない。