AEVE ENDING
「雲雀なら、いいや」
それで陰惨な過去が消えるわけではない。
傷付いた体が再生するわけではない。
空っぽの血肉が、皆と同じように朽ちるわけではない。
―――でも。
「きっとまた、離されるよ」
「僕が知らないうちに死んじゃうのだけはやめてね」
笑う。
かつてあれほど憎んでいただろう、羨んでいただろう男を、今は。
「餞別、頂戴」
首を傾げた私に少しだけ驚いて、緩く笑って、見惚れるくらい、あぁ、こいつは、綺麗だ。
「必要ないよ。君を目の届かない範囲に置くのは危険過ぎるって、わかったから」
―――世界が、優しい。
「どういう意味、ソレ」
「そのままでしょ、馬鹿だね」
餞別なんかくれてやらない。
離れるなんて、僕が赦さない。
「ひば、」
だから代わりに、睦言を少し。
触れてきた唇はやはり歯を立てるには柔らか過ぎて、なにより今まで感じたこともなかったような感情が、吐露して。
「僕の最期は橘にあげる」
「私の最期は、雲雀のもの」
口を揃えて出た独占欲に、互い、きつく胸を締めつけられて。
噛みついたのは、同時だった。
息が続かないほど繰り返される睦事は甘くて甘くて、今にも全身の糖分を吐き出してしまいたい。