AEVE ENDING
「みっ、倫子さんっ!大丈夫ですか!?」
一先ず医務室へと戻ると、目覚めたらしい真鶸が駆け寄ってきた。
背後に立つ奥田がひらひらとでかい掌を揺らしている。
(…あれ、真醍達、どこ行ったんだ?)
見渡す白い部屋には、奥田と真鶸以外見当たらない。
「わかってないならわかってないで面白いんだけど、なんか見てらんないし可哀想だから教えてあげる。鼻血出てるよ、みっちゃん」
「わかってんよこの下半身麻痺ヲが」
「いやああああ下品!」
「真鶸ぁ、こんな雑菌みたいな男といてよく無事だったね。あとでニーチャンに殺菌してもらいな」
「やだよやめてよ」
「君達なに。僕を殺しにきたのかな。エロテロリストならぬキルテロリスト?先生もう対抗できない…」
「うまくねーよ」
最近、傷付きやすい二十七歳、奥田。
悩み事は教え子による言葉の暴力。
あんまり辛いので、M党に転向しようか本気出して考えている。
「倫子さん。血を拭かなきゃ」
ぐいーと真鶸にベッドまで引っ張られる。
壁に凭れながらそれを見やる雲雀と、見事に目が合った。
「…なにさ」
なにか含む視線を負けじと睨みつければ。
「仮にもメスなんだから、鼻血垂れ流したまま動くのやめなよ」
「テメー、口には気を付けろよ」
「倫子さん!喋っちゃだめです!」
「…ただの鼻血だよ」
「女の子でしょう!」
「…すみません」
兄はともかく、可愛い真鶸には頭が上がらない倫子だった。
蒼白だった頬には赤みが戻り、疲労した様子もなかった。
回復が早いのは、雲雀の核が巧く馴染んで作動している為だろう。
「それにしても、どうして鼻血なんか…」
唇に垂れた血を優しく拭いながら、真鶸がハッ息を飲んだ。
(そうだよ真鶸。君のニーチャンに殺られたんだ)
確認するように見てきた真鶸に、倫子もこっくりと意味深に頷いて見せる。
「やっぱりまた先輩達に絡まれたんですか!?」
せんぱい?
またもや蒼白になってしまった真鶸の誤解を解こうと口を開くが―――。
「兄様を慕ってくれるのは嬉しいけど、倫子さんに当たるなんて間違ってます!」
いや確かに、間違いなんだけど。