AEVE ENDING
「うわ」
巨大な多目的ホール。
収容人数約五百人といわれるこのホールは、普段アダム達の実践訓練場として使われている。
それでもここまで多くの人間が集まったのを見たのは初めてだ。
「…凄いや、著名人や政界の人達まで来てますね」
常にないざわつきを一望しながら、真鶸が感嘆の声を漏らす。
政界人か。
(いやだな。…私を知ってる奴等もいるかもしれない)
あの白い独房を、まるで虫でも観察するように見ていた無機質な客人達の眼。
今思い出しても鳥肌が立つほど気持ち悪い。
「…あっ!橘!」
そうして見渡していた人混みから、アミが顔を覗かせた。
その後ろからパートナーのゆかりがはにかみながら頭を下げてくる。
彼女は極度の人見知りらしいが、何故か倫子に優しかった。
他のアダムとは違い、偏見なく倫子と接してくれている。
しかし下手するとイジメに巻き込まれかねないので、一歩引いて接するようアミを通じて頼んであった。
「かなり急な収集だったけど、ダンパなら大歓迎だよね」
「でも、アメリカ最高クラスのアダムだなんて緊張します…」
そんなことを話すふたりに、思わず笑ってしまった。
(…本物のアダム達にしてみれば、そんな些細なことなのか)
―――怯えるな。
自身に言い聞かせている自分が可笑しい。
(怯むな、前を見ろ)
そして、見極めればいい。
堪えうる己を、創りあげろ。