AEVE ENDING
―――ざわつくホール内。
無駄に口数の多いアダム達のお喋りは、今日も変わらず健在だ。
「合衆国の神…か。雲雀様とどっちが凄いかな」
「当然、雲雀様よ!馬鹿ね」
「盲目なんだろう、その人」
「女?男?」
「まだなにも聞かされてないよ。どちらにしろ、雲雀様に敵う筈がない」
「でも、アダムとして必要な能力も体も規定の数字以上だって。理想のアダムそのものらしいわ」
「さあ…、でも、ただの優等生が雲雀様に敵うだろうか」
雲雀、雲雀、雲雀、雲雀。
よくもまあ飽きずに同じ単語ばかり繰り返すものだ。
ある意味、感心してしまう。
(…アナセス、か)
だが確かに、アナセスのことは気になる。
あの精錬された声に、オーラ。
直接会ったわけでもないのに、心臓を突かれたような衝撃が走ったあの瞬間。
(アナセス、)
雲雀と並ぶに、ふさわしい者。
「…倫子さん、どうかしましたか?」
不意に視界に現れた真鶸に倫子は笑みを返す。
物思いに耽っている場合ではない。
とにかく今は、真鶸を見ていなくては。
(アナセスに会って、体に不調がなきゃいいけど)
痛み慣れしてるこの身体とは違う。
その上、真鶸は元々が病弱だ。
アダムの能力がそれをカバーしていると言えど、いつ刃が翻るかわからない。
「…あれ、雲雀は?」
真鶸と共に行動していた筈の姿が見えない。
「兄様なら、東部の新しい理事に挨拶を」
「…あぁ、桐生の代わりか」
桐生が逮捕されれば当然、東部の理事の席は空く。
どんな人物が就任したのか気にはなったが、倫子には知ったことではない。