AEVE ENDING
カツリ。
「なにが違う?」
―――ざわつく背景の中、何故、誰もこちらに気付かない?
「あの場に立つアナセスと雲雀さんのどこに、差異が?」
神と対等に立つ者。
「君は雲雀さんの横には相応しくない」
感情を、掃き溜めのように、顕に、吐き出す。
『私が何故、こんなことをしたか、わかるかね?』
『君を、処理するためだ』
傷付いて傷付いて傷付いて、全身を腐らせて終わるのが、君には似合うよ。
『いやだ、やめろ』
『何故?あんなに会いたがっていたのに』
『…や、め』
―――神様。
『こ な い で、』
「君が雲雀さんの子を産もうと思っても、」
呪いを吐く唇は、何故そこまで美しいのか。
「女として役に立たない化け物には、なにもできやしない」
コ ロ シ テ ヤ ル。
「…っ、」
世界はいつだって私を飲み込もうとしていた。
その腹に巣食う、醜い私を隠すように。
(理由なら、知ってる)
私もおまえと同じ、醜く罪深い体を持っているからだ。
真っ白になった頭の中で警鐘だけが鳴り響いていた。
勢いよく吹き飛んだ男を、「私」は冷ややかに見ている。
(―――なんで、もっと早く)
男が叩きつけられた壁はまさしくアナセスの真横に位置していた。
ホールに群れていた全員が、倫子と男を交互に見ている。
(もっと早く、殺していれば)
男が痛みに呻く。
ずるり。
踏み出した足は今にも腐って床に溶けてしまいそう。
「…倫子、さん」
どこかで真鶸が呆然と絶句した。
聞こえているのに、今はもう、そんな呼び声など役に立ちそうにない。
雲雀の姿などとうに、頭から締め出していた。
―――お前は必要ないよ、雲雀。
私はもう、お前が触れることなど敵わぬほど、不様に壊死を始めている。
「ちょっと、なに?」
「吹き飛ばされたあの人、雲雀様の父親だろ?」
「…なんで、イヴが」
「様子がおかしくないか?」
「アナセスに怪我がなくて良かった。見ろよあの壁のへこみ、」
「生身の人間が喰らって生きてられるか?」
「一体、何事なの?」
ざわ…。
「ねぇ、」
「あのイヴの眼…」
キ モ チ ワ ル イ。