AEVE ENDING
アナセスに見惚る横顔は、私を裏切ったのかもしれなかった。
醜い笑みが込み上げたのを、隠せない。
口許が無様に歪むのを感じながら、掌についた血痕を見つめる。
(狂ってたんだ、はじめから…)
真横で、ロビンが息を飲むのが判った。
「…ニーロ、アナセスを避難させろ」
静かに吐き出された言葉は、何に起因するものだったのだろうか。
美しいものを守る、美しい声だ。
(私には、もうない)
目映いばかりの光が遠ざかるようだった。
惹かれるようにそちらを向いた私という名の蛾は、アナセスの目に、雲雀の目に、どう映るだろう。
―――男と女は、とっくに痛みで気を失っていた。
ニーロという黒人が、アナセスを守るように抱き締めている。
それを更に庇うように、ロビンが立つ。
「…お前、キモチワルイ」
言われなくても、知ってるよ。
神よ、どうか憐れな娘に贖罪の猶予を。
御霊に往くにはあまりにも穢れてしまった娘をどうか、慈しまんことを。