AEVE ENDING
ざわつきを取り戻すホール内で、雲雀はただ倫子を見つめていた。
―――見るなよ。
「…もう、いい」
振り絞るように吐き出したそれが伝わったのか。
雲雀のその、色のない声に。
―――息が、停まるかと。
未練たらしく見上げた雲雀の顔は声と同様、やはり色を失くし、初めて会った時よりずっと、遠い、…眼で。
(ひば、)
音もなく縋ったそれは未だ、執着を露にして。
―――それでももう、届かない。
「…僕が必要ないなら、勝手にすればいい」
一瞬細められた眼が吐き出した冷笑に、声を上げて泣きたくなった。
下された罪はこれなのか、神よ。
私はこの男にだけは、視線を逸らされたくなかった。
「……」
ゆるりと落ちた雲雀の視線はまたすぐさま上がり、けれどもう、私を映しはしなかった。
「―――アナセス」
私が心底から焦がれる声で、美しいその名を呼ぶのか。
「…シュラ、?」
それに応えるように、アナセスの柔らかな声が雲雀を呼び寄せる。
まるではじめから、互いを知り得ていたように。
(…やめて)
雲雀がまるで実体のない風のように倫子を横切った。
小さく舞った風が酷く冷たくて、肩が竦む。
「貴方に、お会いたかったのです、麗しいシュラ」
その美しくたおやかな声色で、雲雀を求めるのか。
「…っ、」
―――やめ、
「…君も綺麗だよ、まるで、産まれたての赤ん坊みたいだ」
その麗しい肌に触れるのを赦されるのは、やはり同様に美しく輝かんばかりの皮膚であり心であるのか。
―――神よ、私はもう。