AEVE ENDING





―――気味が、悪かった。

アナセスの微笑は心底から美しいのに何故か、血の通わない完璧さが漂っている。

(鏡みたいだ…)

兄と、瓜二つの、姿。

形容は全く違うのに、そう見えてしまうわけは。


(―――神が、ふたり)

ではあのふたりは地上で唯一無二の、最も近しくある者達だということ。



「…あぁ、ちがう」

そんなこと今は、どうだっていい。

その端で立ち尽くす、彼女の姿が。

「みちこ、さ」

雲雀を突き放したその細い腕は震えたまま、俯いたその表情は、見えない。

(…兄様、)

兄様、どうして、倫子さんを。



「倫子さ、」

震えながら、呼び掛けた。
倫子さんに脅えていたのもあったのかもしれないし、なにより、まるで今にも壊れてしまいそうなその儚さが、怖かった。

(触れたら僕ではなく、彼女が傷付いてしまいそうで)

けれどそうして躊躇っている間に、真鶸が倫子に駆け寄ることは叶わなくなってしまった。



「そのバケモノを独房に入れなさい」

キンと空気がひきつる音がした。

政界の重鎮―――真鶸の父や母と共に箱舟制度へと関わる一人がそう口にした。
狸のような様相はどこか気味の悪い薄笑みを浮かべ、不純な目付きで倫子を捕らえている。

その言葉に、配属されていた警備隊達が倫子を取り囲み、負傷した三人を救護班が担架に乗せた。
その騒ぎに、更にホールは騒がしさを増す。


(あのまま死ぬまで独房に入っていたらいいのに)
(なんでここから追放しないんだ?)
(箱舟内の独房だろう?外の専用保管所に入れてしまえばいいのに)
(ばかね、保管所は第一級犯罪者の溜まり場よ)
(だからだよ。あんなキチガイ、いらねーのに)


耳に入る言葉は、雑音ばかりだ。





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