AEVE ENDING





「…っ倫子さん、!」

警備隊をかいくぐり倫子に駆け寄ろうとするが、やはり叶わない。

救護班はなにを勘違いしたか、ご両親は大丈夫ですからお下がりください、と真鶸を宥めた。


(…父様、母様)

気にならないわけじゃない。
しかし何故、実の両親より会ったばかりの倫子を気にかけてしまうのか。


(…だって、あんな、)


傷付いた眼、は。

墜ちるような、傷が。


―――掻き立てる。





「倫子!」

人混みから悲鳴が聞こえた。

アミだ。
こちらに駆け寄ろうとしてやはり、警備隊に危険だと阻止される。


「…倫子…、たちばなぁっ!」

アミは今にも泣き出しそうな顔で、必死で呼び止めようとする。
その声に反応した倫子が、三名の警備隊に連行されながら、ゆるり、こちらを見た。


「…っ、みち、」

悲鳴が途切れたのは、きっと。





ご め ん


唇だけが紡いだ、音のない、謝罪。


―――何故、貴女が。




「兄様…っ!」

気付けば、そう叫んでいた。
ひくりと反応する傷付いた身体に、けれど構ってなどいられない。


あの、眼は、だめ。

―――だめだ。





「兄様…!倫子さんが、倫子さんが…っ!」

彼女の意向など無視して、とにかく助けて欲しかった。

抵抗する様子もなく、ただ大人しく連行されていく背中が、みるみる内に滲んでゆく。

それなのに雲雀はアナセスと言葉を交わしたまま、振り向こうともしない。


(…ねぇ、どうしてですか)



「バケモノよ」

兄様、と真鶸が泣きながら叫ぼうとしたその時、耳障りな声がそれを遮った。

見れば、先ほど警備隊を呼んだ政界の狸が倫子の進路を塞いでいる。

(…倫子さんを、知って、?)

疑問は解決されることなく、小さく交わされている筈の言葉が聞こえるのは、アダムの力か。


「まさかオマエが生きていたとは、まさに寝耳に水よのう。…神に嫌われた醜い罪人よ」

この時ほど、この力を呪ったことはない。


「待っていろ。後でさんざ痛ぶってやるわ、…昔のように、独房でな。感謝せい、憐れな女よ」

耳を侵すそれはなにより、醜悪。





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