AEVE ENDING
「お騒がせ致しました。犯人は捕らえました故、アメリカ合衆国箱舟代表「マリア」の歓迎パーティーをここで仕切り直しさせて頂きます」
マイクの音声がホール内に響く。
本来ならば外交官である雲雀と真鶸の父の仕事を、狸はにこやかに執り行った。
その言葉をスタートに、クラシックの生演奏が再開され、ホール内は一気に華やかな雰囲気を取り戻す。
先程まで殺気立っていた生徒達や困惑を露にしていた賓客達も、にこやかな笑みを浮かべ何事もなかったかのようにダンスに勤しんでいた。
―――それは、この箱舟にとって橘倫子という存在が取るに足らないものだということを、残酷にも立証している。
それを舞台袖で冷ややかに眺めていた雲雀に、真鶸が駆け寄る。
それはアミも同時だった。
「どういうこと」
アミから低く吐き出されたそれはなにかを抑えているようだった。
叶うなら、雲雀を殴りたかったんだろう。
雲雀の隣に立っていたロビンが、なんだなんだと首を突っ込んできた。
「兄様、倫子さんは…」
アミの気持ちもわからなくはなかった。
何故、雲雀は倫子を見捨てたのか。
「手を離したのは、橘が先だよ」
しかしアミの気迫を事も無げに流し、雲雀はそう答える。
その回答が、アミの怒髪点を突いた―――。
「そういう問題じゃないわよ!」
周囲を破壊しかねない怒声はあまりにも悲痛で、失望すら、漂う、絶望。
「倫子がそう言わざるをえなかったのを知ってるくせに。倫子が自分を責めて君を拒絶したことを知ってるくせに、突き放されたからそのまま返したっていうの?ふざけんじゃないわよ!」
まさか倫子以外に雲雀にここまで怒鳴れる人がいるとは。
真鶸は蒼白になったが、納得もした。
(それだけ倫子さんが大切なんだ…)
アミのパートナーであるゆかりは蒼白のまま、ただ静かにこちらを見守っている。