AEVE ENDING
「あんな、あんな…っ、アナセスみたいに綺麗な子を前に、あの子が平気でいられるわけないのに」
傷付かないわけがないのに。
自らを貶めないわけが、ないのに。
「わざとらしく倫子の前でアナセスを綺麗だなんて言って、そんなにあいつを虐めたいってんなら、私が相手になるわよ!」
怒りの矛先を直接には向けられなかったアミに、雲雀の代わりに殴られた壁は脆く崩れさった。
傍観者のロビンは首を傾げながら、化粧直しに引っ込んでいたアナセスの登場に暢気に歓声を上げる。
そうして感情が高ぶり、とうとう泣き出したアミを慌てた様子でゆかりが抱き抱え、雲雀達に一礼して去って行ってしまった。
「…綺麗、ね」
雲雀がぽつりと言葉を洩らす。
先程より更に美しさが増したアナセスが、雲雀を覗き込んでいた。
「シュラ?」
躊躇いがちに伸ばされた手は折れてしまいそうなほど華奢で、剥き出しの皮膚は今にも空気に融けてしまいそうなほど輝かしく、白い。
目が潰れてしまいそうなほど、眩しかった。
「―――触るな」
ばしり。
しかし雲雀は、あろうことかその美しい手を乱暴に叩き落とした。
これには真鶸もアナセスもアナセスを取り囲む「マリア」のメンバーも、目を丸くする。
雲雀は汚いものでも見るかのようにアナセスを見下し、不愉快だと言わんばかりに彼女の手を払った自らの手を空中に振った。
アナセスが雲雀にダンスを申し込む様を、にこやかに見守っていたロビン達が一斉に正気になり、騒ぎ出す。
「ナにをするんだ!」
「なんてこと!アナセス、大丈夫?」
まるで子を守る親のようだった。
雲雀の崇拝者とは違う、愛情に近い異質。