AEVE ENDING





「ぎ、…ぃ、ぁ」

気付けば、醜く呻く男は床に這いつくばり、へし折られた高くもない鼻を両手で抑えている。

一瞬の出来事に目を見開いている倫子を一瞥してから、雲雀は再び、男に向き直った。


「ヒッ、や、や、め゛…」

怯えおののく男がこちらを仰ぐ。
神に誓うように救済を請うその姿は、見慣れたものだった。


『赦してくれ』

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、ひばり、さま、…』

『神、よ』



―――虫酸が走る。








「っ雲雀!」

男の真上に掲げた脚を垂直に落下させた。

狙いを定めた踵は男の背骨に寸分の狂いもなく当たり、ごきり、鈍い音を立てて脊髄を折った。

男がぴくりとも動かなくなって、単純につまらないと感じた。


(もっと、もっともっと痛め付けて殺せばよかった―――)

全身の血が沸騰する。

ゆるり、悲鳴を上げた倫子を見やる。




「…な、にっ」

悲鳴など飲み込んでしまえばいい。

上げる必要も、ないのだ。

悶える体を抑え込んでテレポートした先―――自室の浴室。
テレポートの負荷にびくり、喉を鳴らす倫子を、雲雀は乱暴に浴室に投げ込んだ。


「づッ…」

呻く体に温度調節もしていないシャワーを注ぎ、冷たさに悲鳴を上げる倫子を見下す。

カタリ。

ノズルを留め具に掛けて水を流したまま、倫子を浴槽に放り込んだ。

ずるり、濡れた髪を引き上げて、上を向かせる。


「っ、」

なにがなにかもわからないまま睨みつけてくるその眼は、やはりどこか怯えたまま、それでも殺気に満ちた眼、で。


―――ねぇ、僕をどうしたい?





「っ…!」

辛うじて皮膚に張り付いていたシャツを破り棄てた。

ひくりと跳ねた淡い乳房から視線を外し、その首に手を伸ばしたが、触れるか触れまいか、爪先が皮膚を擦った瞬間、振り払われた。



「触るなっ」


いきりたつ、無防備な獸。




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