AEVE ENDING
「ひばり、」
汚い裸体を曝したままの倫子を気遣ってか、その両腕が背中にまわって抱き締められる。
心臓を、鷲掴みにされた気分。
どうしても呼びたくなって呼んだ名前に、すぐさま返答はなかった。
代わりに、抱く腕に力が込められる。
右肩に乗る雲雀の頭が重くて、肩に触れる呼気が熱くて、少し、怖い。
「…なに」
遅い返答は、少し苛立っているのか、いつもより低く、やはり怒ったのかと不安になる。
「……今、必死で抑えてるから、黙ってて」
切実に訴えられたそれに、笑ってしまった。
「なに、笑ってるの」
吹き出しはしなかったものの、気配で読み取ったらしい雲雀が顔を上げる。
拗ねたような顔が、可愛い。
まさかこいつのこんな顔を見れるとは思っても見なかった。
顔は離れても、抱かれたままの腕が嬉しい。
「ごめん」
だって、嬉しかったから。
雲雀がそんな風に感じてくれたことが、心底。
―――応えられなくて、ごめん。