AEVE ENDING
「言いたいことがあるなら、はっきり言えば」
促してやれば、ぱたり、と顔を逸らした。
静かな部屋に、妙な沈黙が訪れる。
一体なんなんだともう一度溜め息を吐きかけて―――。
「…ごめん」
静寂にすら消えそうな声で、謝罪された。
正直、なにについての謝罪か計りかねた。
心当たりが多すぎる。
真意を得ようと顔を覗き見るが、俯いたままの顔はタオルケットに埋まっており、見えやしない。
なにが、と口を開きかけて、赤くなった耳に視線が引き込まれた。
(―――あぁ…、)
合点がいったと同時、その耳に唇を寄せて、犬歯を突き立てる。
「ぎゃっ」
相変わらず色気のない声で鳴く、と少々呆れながら、勢い良く跳ねた顔に、顔を近付けた。
至近距離のそれは、シャワーの湯に当たっていたからか、はたまた別の理由か。
いい具合に火照ったそれに意地の悪い笑みを浮かべる。
「…謝るくらいなら、ちょっとは頑張ってくれればいいのに。慣らすくらいは、協力してよ」
なにを、とは言わせない。
わざとそれを匂わせるように、間抜けに半開きになった唇を指で撫でた。
愛撫ともいえない愛撫を受けて、倫子は更に困惑した表情を浮かべる。
当人の頭の中では色々と展開されているのか。
それを明言するように、青くなったり赤くなったりしている顔が面白かった。
「…まあ、君みたいな凶暴なメスの覚悟くらい、たかがしれてるけど」
唇から指を引いて嘲れば、見る見るうちに中央に寄る眉毛。
半眼で雲雀を睨みつけながら、次は倫子の反撃。
「…テッメー、こっちが大人しくしてればさっきから人で遊びやがって。動物扱いすんじゃねーよ、スズメ!」
あぁ、調子が出てきたね、と自然上がる口角は自覚済み。
「それ、そのまま返すよ」
「返さんでいい!この発情期スズメ!」
ふうん。
威勢よく飛び出した悪態に、にこり、微笑めば、雲雀を見上げる倫子の頬がひくり、ひきつった。