AEVE ENDING
「…真鶸」
少しばかりの罪悪が混じるのは例の二人―――正気を失っていたとはいえ、真鶸の両親を殺しかけたことが痼(しこり)となっているのだろう。
控え目に顔を覗かせた真鶸は、もとに戻った倫子を見て安堵したらしい。
躊躇いがちだった表情はすぐさま抜けるような笑顔となり、嬉しさに満ち満ちた表情で倫子に駆け寄ってきた。
「倫子さんっ、…!」
感涙に揺れる目で倫子に飛び付く。
小さな真鶸を難なく受け止めて、しかし手放しで喜びはできず、倫子は戸惑ったように雲雀を見た。
―――この子に果たして自分が触れていいのか、と問い掛けるように。
腕の中でわんわん泣き叫ぶ真鶸を自らの葛藤から抱き締められないまま、ゆらゆらと揺れている。
(…馬鹿だね)
醜く汚らしいと自白する体に、それでも真鶸が懐くのはそれだけの価値があるということだ。
(いいんだ、そんな下らないこと)
雲雀が促すように笑んでやれば、倫子はやっと両手を動かした。
美しいものを泥で汚さぬよう、真鶸の小さな頭をそっと支え、気遣うように髪を梳く。
ひくひくと咽び泣く真鶸は倫子の手に反応して、更に力を込めて抱きついた。
可愛い弟のいじらしい光景ではあるが、あまり心底から微笑ましいわけでもない。
(…子供って得だ)
先程、全身で拒絶された我が身を思う。
よしよしと真鶸の頭を撫でながら涙ぐむ倫子に呆れつつ、雲雀は耳についた騒がしさに半開きの扉に眼をやった。
「「タチバナ!」」
真醍と鐘鬼が異口同音で駆け込んできたかと思えば。
「倫子!」
奥田とササリが、やはり前者同様に走り込んできた。
ここは集会場じゃないと、忠告するかしまいか迷った瞬間だった―――。